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uehaj's blog

Grな日々 - GroovyとかGrailsとかElmとかRustとかHaskellとかFregeとかJavaとか -

SpockにおけるMock、Stub、Spyの違い

groovy spock

テスティングフレームワークSpockで相互作用中心のテストをする場合、いわゆるテストダブルとして、MockとStubとSpyの3種類を使えます。それぞれの意味などを簡単に解説します。
Spock全体含め詳しい解説はこちらなどを参照ください。
Mockに関しては、id:yamkazu 氏によるこちらのJGGUG G*Workshopの資料も秀逸です。

Stubとは

最初に、Stub(GroovyStub)についてです。Stubは後述Mockの低機能版であり、具体的には「モッキングができないMock」がStubです。StubができることはMockでできるので、本来Stubを使う必要はありません。モッキングしないことを明示したいなら、使えば良いでしょう。なお、Spock用語の「スタビング」とは別のものです(スタビングおよびモッキングについては後述)。

Mockとは

Mock(もしくはGroovyMock)は、テスト対象が使うクラスを指定して、そのクラスのインスタンスの真似をするオブジェクト(モックオブジェクト)を作ります。真似をするというのは、「元のクラスにあるのと同じシグネチャのメソッドを、モックオブジェクトに対して呼び出したりできる」ということです。Mockのメソッドを呼んでも、Mock元になったオブジェクトの本物のメソッドは呼び出されません。

たとえると、モックは「代役」です。本人は楽屋かなにかで休んでおり、リハーサル(テスト)では代役が呼び出しに応じて努めます。

以下、Mockの使用の例です:

class TestUnit3Spec extends UnitSpec {

   def test00() {
      setup:
        def bean = Mock(SomeBean3)
      when:
        def result = bean.methodOfSomeBean()
        println result
      then:
        1 * bean.methodOfSomeBean() >> 123
        result == 123
   }
}

class SomeBean3 {
   int methodOfSomeBean() {
     println "hoge"
     100
   }
}

上の例では、実際のメソッド methodOfSomeBean では「100」を返しているのにもかかわらず、あるいは"hoge"を出力しているのにもかかわらず、帰ってくる値は「123」だし(assert result=123)、println "hoge"は実行されず、当然"hoge"も出力されません。

ではその代役(モック)は何をするのか?というとですね、モックは、自身のメソッドが呼び出されたときに、「どんなメソッドがどんな引数で呼び出されようとしたか」を記録しており、期待するものだったかどうかを後でチェックできるようになっています。以下がそのチェック部分です.

        1 * bean.methodOfSomeBean() >> 123

この場合、methodOfSomeBeanが1回、呼ばれるならチェックが成功します。


利点としては、上の場合SomeBean3のメソッドが実装されているかどうか、どのように実装されているか、正しいかバグがあるかと関係なく、シグネチャさえ決まっていれば「SomeBean3を使うコード」の試験ができることです。本来「単体試験」というのはかくあるべきだと思いますね。

注意

上の例では、SomeBean3をMockしてますが、「試験対象クラス」がSomeBean3だという想定ではありません。その意味で、上は、試験対象を試験してないテストという変な例です。「試験対象クラスが使用するクラス」に代役を立てることができるのであって、試験対象クラスそのものに代役をたてたら意味ありません。コラボレータとよばれる、「試験対象クラスの動作に必要なクラス」、脇役とか背景の群集とかに、代役を立てるってことです。

Mockまとめ:

  • Mockは代役であり、本人の代りを務める。
    • なので本番オブジェクトのメソッドができあがってなくても、それを使うオブジェクトの試験ができる。
  • Mockに行なわれたメソッド呼び出しの有無と回数、引数などを記録をしてくれる機能ももっている
    • それを後で確認できる。試験がはかどるわ〜。

Spyについて

これに対して、Spy(もしくはGroovySpy)は、その対象とするオブジェクトが、実際に存在する必要があります。偽物だけではなく、本物インスタンスが存在していることが必要です。

Spyの役割りは、「横からメソッド呼び出しの様子を監視し、その呼び出しメソッドや引数を記録するというものです。加えて、最後にその記録された情報、どんなメソッドがどんな回数呼びだされたかをチェックすることができます。Mockと同じようですが、Spyでは戻り値の「本当の値」でのチェックができます。反面、試験対象オブジェクト以外のコラボレータの振舞いに結果が左右され得ることになるので、単体試験としてはどうなんでしょう、という感じもします。

たとえると、スパイは「善意のマンインザミドル攻撃」のようなものです。呼び出し側と対象オブジェクトの間に挟まった代理人で、あとから整合性を確認するための記録を取ってくれます。

なお、Spyでは、スタビング指定すると、実際の値以外の値を返させ、元メソッドを呼ばない動作をさせることもできます。(メソッド個別にMockのように動作させることもできる)。

Spyまとめ:

  • Spyは、本人とのやりとりを横から監視してやりとり記録する
    • なので本番オブジェクトは必要。本番オブジェクトのメソッドの呼び出しの実際の実行、およびその返り値を使っての試験ができる。
      • 本番オブジェクトのメソッドを呼ばずに、特定の別の値を返すこともできる(スタビング指定する)。
      • 本番オブジェクトのメソッドを呼び、かつ、特定の別の値を返すこともできる(スタビングでクロージャ指定, callRealMethod使用)。
  • 自身に行なわれたメソッド呼び出しの有無と回数、引数などを記録をしてくれる機能ももっている
    • それを後で確認できる。試験がはかどるわ〜。

MockとSpyの違いと使い分け

MockとSpyの実用上の最も大きな違いは、Mockの場合はメソッドの返り値がテキトーなもの、0とかnullとかになるということです。実体がないからしょうがありませんね。試験の都合のために、Mockでそれらしい特定の値が返ってほしいときは>>で返り値を明示指定します(スタビング)。

Spyは実際の値がかえるから、>>をする必要はありません。あえて>>しても良いですけれども。

どちらをどのようなときに使い分ければ良いか、という指針ですが、SpockのドキュメントにはSpyについて「(この機能を使用する前に一度考えなおしてください。もしかすると仕様対象のコード設計自体を見なおしたほうが良いかもしれません。)」とのことです。なので、

「なるべくMockで、それでなんらかの不都合があるならSpyで」

でしょうか。

なお、SpockのMock,Spy,Stubという機能は、世に一般的に言う、モック、スパイ、スタブの説明とは微妙な違いがあるかもしれません。上はあくまでSpockのそれらの説明です。

おまけ: モッキングとスタビング

モッキング

Spockにおいて、モッキングとは、テスト対象クラスに対するMock, Spy, Stubのいずれかで、発生を期待するイベントすなわち「どんな引数でのメソッド呼び出しが何回、どんな順序で発生するか」の期待を記述しておくことを言います。

ジョセフ・ジョースターで言えば、「おまえは次に〜する!」「おまえは次に〜言う!」と予告のことです。テストが成功したら、「ハッやってしまったぁ〜!!」と言わねばなりません。

こういう感じになります(以下、こちらより引用)。(*)のところで「1 * ...」しているところがモッキング。


次の例を見てください。

def "should send messages to all subscribers"() {
    when:
    publisher.send("hello")

    then:
    1 * subscriber.receive("hello") // (*)
    1 * subscriber2.receive("hello") // (*)
}

文章としてコードを読んでみると「publisher が ‘hello’ のメッセージを send したとき、 それぞれの subscriber は 1回 message を receive すべき」になります。

スタビング

スタビングは、メソッド呼び出しの返り値を(上書き)指定します。

こちらからまた引用しますが、以下のコード例の (**)のところで>>指定しているのがスタビングです。


固定の値を返す
すでにここまでの例の中で出てきましたが、固定の値を返すには算術右シフト(>>)演算子を使用します。

subscriber.receive(_) >> "ok"

呼び出し毎に異なる値を返すには、それぞれ個別のインタラクションとして定義します。

subscriber.receive("message1") >> "ok" // (**)
subscriber.receive("message2") >> "fail" // (**)

これは"message1"を受信すると"ok"を返し、"message2"を受信すると"fail" を返します。返す値に制限はありませんが、メソッドの戻り値型の制約を外れることはできません。

スタビングとモッキングは同時に行うことも可能です。

1 * subscriber.receive("message1") >> "ok"

モッキングはMockに、スタビングはStubに、という対応はありません。
ただし、Stubはモッキングができず、スタビングのみが行えます。
つまり以下のとおりです。

スタビング モッキング
Mock
Spy *1
Stub ×

*1:固定値を指定してSpyをスタビングすると元メソッドの呼び出しは抑制される。

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